【錢屋商店モノがたり vol.008】 本物を選択するということ
今回は江戸時代から受け継がれている「木桶仕込み」でお酢づくりを続ける蔵元中野商店をご紹介します。そもそもお酢がどうやって作られているかご存知ですか。日本のお酢は酒造りの技術とともに伝えられた発酵食品のひとつ。お酢が発酵調味料であることも忘れてしまっているのでないか・・・そう危惧します。
量販店でみかけるものは、価格も様々ですがおそらく1リットル数百円でしょうか。蔵元中野商店のお酢は1,800円台後半から4,000円台。“お酢の価格は1リットル数百円。”と思い込んでいると、同じお酢でそんなに高いのは高級品なんだろうか。と思われるかもしれません。そもそも、同じお酢でしょうか。“発酵”の工程を省いてつくられているお酢がこの世にたくさん存在しています。それは、本来の製法でつくると、手間と時間がかかり、さらには出来上がりの量は限られます。従来の作り方に変化が出てきた理由の一つとして、食糧難という背景もあったのかもしれません。様々な理由も予測はつくのですが、大量生産、価格競争が激化し、本来の作り方をしていたお酢やさんが廃業に迫れたことも事実でしょう。
食品の業界も変化する中で、本物を作り続ける蔵元中野商店。こちらで作られるお酢は飲んで元気になれるお酢です。スタッフから「このお酢だけでピクルスを作りました」と言われて差し出されたものは、いやな酸味はなく、甘みとコクがあり、のどに残らずにすっと味わえました。年を重ねるごとに健康を保つためには、日々の調味料選びにも気持ちを傾けていきたいと思っています。そして、伝統的な製法を守り続けている醸造元を絶やさないためにも、自分の選択が未来をつくる一歩であることも意識し、選択していきたいと思います。