【錢屋商店モノがたり vol.005】生産者だけが味わっていた至福のメイプル
今回はミックのメイプルヌーヴォーをご紹介します。フランス語で“新しい”を意味する「ヌーヴォー」。なぜ「ヌーヴォー」と名付けられたのか、それは商品になるまでの工程に意味がありました。
メープルの樹木は、夏の間に樹木の内部に蓄えたでんぷんを糖分に変えて、カナダ(主にケベック州)の冬の厳しい寒さに耐えます。そして雪解けの頃、その時期特有の昼と夜の温度条件によって、樹木は、大地からミネラルたっぷりの水分を吸い上げ、糖分をわずかに含んだ樹液を流し出します。この期間は、わずか10日から20日ほど。その樹液を煮詰めてメイプルシロップをつくります。
通常は、煮詰めたメイプルは、一旦ドラム缶に保存します。それを出荷する際に殺菌のために再加熱処理をしてボトル詰めし出荷します。2度の加熱は風味がどうしても落ちてしまうのです。しかし、そんなことは当たり前としてきましたから、「ヌーヴォー」と呼び始めることになる、再加熱なしのメイプルシロップを商品化する人はいなかったのです。では、なぜ私たちが味わえるようになったのか。それはミックの代表が生産者を定期訪問していた時に、一度だけ加熱されたものを味わい、その美味しさに感動し、「これを瓶詰めしてほしい!」と懇願したから。
しかし、製造工程に大変な手間がかかるため、当初は商品化について断られ続けたそうです。
代表はあきらめきれず専用の機械までも提案し、熱意を伝え続けること約3年。商品化が決まりました。
保管や加熱による風味や香りの変化が少なく、メイプル本来の味が保たれたまま瓶詰されたメイプルヌーヴォー。先日錢屋本舗が運営する錢屋カフヱーでは期間限定で「オムレット」を提供。生地やクリームは甘さ控えめにし、天然甘味料であるメイプルで甘さを表現しました。コクがあるのにさらっとした口あたりは感動的です。生産者だけが味わっていた初物の樹液「メイプルヌーヴォー」をぜひご賞味ください。
ミックのスタッフ渡瀬さん